企業出版とブランディング出版の違い
企業出版とブランディング出版の違いとは?
目的・読者・本づくりの考え方を解説
「企業出版とブランディング出版は、何が違うのか」「自社で本を出すなら、どちらを選べばよいのか」。本を事業に生かそうと考えたとき、この二つの呼び名に迷う方もいらっしゃるでしょう。
企業出版は企業の課題解決を目指す出版全般を指し、ブランディング出版は、そのなかでブランドづくりを重視するものです。両者の関係と、目的・読者・仕様の考え方を、私自身の制作経験も交えて説明します。
企業出版とブランディング出版は、何が違うのか?
企業出版とブランディング出版は、まったく別の出版方法というわけではありません。どちらも、企業が制作費を負担し、本を通じて企業の課題解決を目指すという点で共通しています。書店やAmazonで販売する場合もあれば、取引先や社員などへ配布する場合もあります。
違いがあるのは、目的の捉え方です。企業出版は幅広い経営課題を対象とする呼び方であり、そのなかでブランドづくりを主目的にしたものが、ブランディング出版です。「企業出版の一つにブランディング出版がある」と考えると、関係がわかりやすくなります。
企業出版は、集客から採用・事業承継までを含む
企業出版の目的には、集客、販売促進、ブランディング、人材採用の強化、社員教育、後継者育成、事業承継などがあります。たとえば、経営者の理念をまとめて社員教育に役立てる本も、専門知識を紹介して新しいお客様との接点をつくる本も、企業出版に含まれます。
ブランディング出版は、「この会社らしさ」を伝える
一方、ブランディング出版で中心になるのは、「この会社は何を大切にしているのか」「どんな価値を提供しているのか」を伝えることです。会社や商品に対する信頼、共感、憧れを育て、長く選ばれるための土台をつくります。
ただし、実際の本づくりでは目的が重なります。ブランドへの共感が採用につながることも、専門性への信頼が集客につながることもあるからです。呼び名の線引きにこだわるより、今回の出版で何を最も実現したいのかを明らかにすることが大切です。企業出版全体については、企業出版・ビジネス書の出版をご覧ください。
| 比較する点 | 企業出版 | ブランディング出版 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 企業の課題解決に本を活用する取り組み全般 | 企業出版のうち、ブランドづくりを重視するもの |
| 主な目的 | 集客・販促・採用・社員教育・事業承継など | 企業や商品への信頼・共感・憧れの形成 |
| 読者 | 目的に応じて、顧客・採用候補者・社員などを設定 | 既存顧客に加え、将来の顧客や社員なども想定 |
| 仕様 | 目的・予算・使い方に合わせて選ぶ | ブランドの印象に合わせ、装幀にこだわる場合がある |
| 販売・配布 | 書店販売・直接配布などから選ぶ | 書店販売は必須ではなく、贈呈・配布も選べる |
なぜ、企業はブランディングを重視するのか?
商品やサービスの機能、価格、条件だけで、他社との違いを伝え続けるのは容易ではありません。競合各社が似たサービスを展開する市場では、機能面の差が小さくなるほど、「どの会社に信頼を感じるか」「どのブランドに共感するか」が選択の理由になってきます。
サービスの違いだけでは、選ばれる理由をつくりにくい
たとえば、携帯電話会社を比較すると、各社が料金や通信サービスを工夫しながら競争しています。もちろん具体的な違いはありますが、利用者が細かな条件をすべて比べて選んでいるとは限りません。広告や店舗、これまでの体験を通じて持ったイメージも、判断に関わっています。
中小企業であれば、限られた市場で独自の技術やサービスを磨く道もあります。しかし、その独自性も、お客様に理解していただけなければ十分に伝わりません。本は、会社の考え方や技術の背景を、まとまった言葉で説明するためのメディアになります。
価格以外の価値を理解してもらう
強いブランドには、単に安いからという理由を超えて、お客様に選んでいただける力があります。高級ブランドのものづくりや歴史、世界観が商品への憧れにつながるように、企業にも価格表だけでは伝えられない価値があります。
ブランディング出版は、会社が積み重ねてきた価値を言葉にし、「この会社を選びたい」と思っていただくための手段です。本を出せば直ちに高く売れるという話ではなく、価値を理解していただくための土台づくりと捉えるとよいでしょう。
本を事業にどう結び付けるかについては、ブックマーケティングの活用法でも説明しています。
テレビCMと比べると、ブランディング出版の役割が見えてくる
ブランディング出版を理解するには、テレビCMと比べて考えるとわかりやすくなります。テレビCMも本も、企業が情報や価値観を伝えるために使う広告・広報メディアの一つだからです。
今すぐ買ってもらうことだけが目的ではない
高級車のCMを見た人が、その場ですぐに車を買うとは限りません。それでも、「いつかはあの車に乗ってみたい」という憧れが生まれれば、将来の選択につながる可能性があります。いま買える人だけでなく、数年後、あるいはもっと先のお客様にも働きかけているわけです。
生命保険会社のCMでも、保険料や保障条件を細かく説明するだけでなく、「暮らしを見守る」「家族に寄り添う」といった安心感を伝える表現があります。商品を直接売り込むことと、会社に好ましい印象を持っていただくことには、役割の違いがあります。
本は、考え方や背景までじっくり伝えられる
テレビCMが短い時間で印象を伝えるのに対し、本では、会社の歴史、経営者の思い、技術やサービスが生まれた背景などを、まとまった分量で説明できます。「なぜこの会社は、その仕事を続けているのか」を知ることが、読者の共感や信頼につながります。
ブランディング出版では、商品を紹介するだけでなく、その商品やサービスを支えている企業の姿勢まで伝えます。そのためには、自社が言いたいことを並べるだけでなく、読者が興味を持って読み進められる構成が必要です。
ブランドづくりは、お客様だけでなく社員にも届く
ブランディングの対象は、既存のお客様や潜在顧客だけではありません。自社で働く社員に対しても、「この会社で働く意味」を伝える役割があります。
社員が自社に誇りを持つきっかけになる
たとえば、自分が勤める会社のCMを見て、「自分たちはこういう価値を社会に届けているのだ」と感じることがあります。全国各地で営業する社員にとって、会社の姿勢が社会に向けて発信されていることは、日々の仕事を支える励みにもなるでしょう。
本でも同じことが考えられます。創業時の苦労や、大切にしてきた判断基準、現場で積み重ねてきた工夫を一冊にまとめることで、社員が自社の価値を捉え直すきっかけになります。経営者の思いを、普段は接点の少ない社員にも届けられます。
採用や理念継承ともつながっている
企業の価値観が伝わる本は、入社を検討する方に会社を知っていただく資料にもなります。また、社員教育や後継者への理念継承に活用することもできます。ここにも、企業出版とブランディング出版を完全には切り分けられない理由があります。
社外には信頼を、社内には誇りを育てる。ブランディングを考える際は、社内の読者も視野に入れてみてください。採用を目的にした本の例は、人材採用会社の企業出版成功事例も参考になります。
想定する読者と、成果を考える時間軸の違い
企業出版は、解決したい課題に合わせて読者を決める
企業出版では、出版の目的によって読者が変わります。人材採用が目的なら、新卒学生や中途採用の候補者が主な読者になります。社員教育なら社員、事業承継なら後継者や幹部が中心です。目的が具体的であるほど、誰に向けて書くかも定めやすくなります。
ブランディング出版は、将来の顧客との関係も育てる
ブランディング出版では、すぐに商談や採用につながる方だけでなく、会社に良いイメージを持っていただきたい方まで視野に入れます。今は直接の取引がなくても、暮らしや仕事の状況が変わったときに、お客様になっていただくことを考えるのです。
そのため、若い世代から年配の方まで、幅広い年代を想定する企画もあります。ただし、ブランディング出版だからといって、必ず読者を広げるわけではありません。特定の専門分野や地域のなかで信頼を深める企画もあります。
「広く届けたい」と「誰に向けて書くかが曖昧」は別です。最も共感してほしい読者を思い描き、その方に伝わるテーマや言葉を選ぶことが、結果として読者の広がりにもつながります。
読者の設定から取材・原稿作成までの進め方は、当社の取材・執筆方法をご覧ください。
装幀・部数・費用は違う?通信会社の制作事例から
企業出版とブランディング出版で、判型や部数、製本方法が制度として決まっているわけではありません。どちらも目的、読者、予算、届け方に合わせて設計します。そのうえで、ブランドの印象を重視する本では、見た目や手触りにも力を入れることがあります。
ハードカバーや箔押しで、企業の世界観を表現する
手に取った瞬間の印象を大切にしたい場合には、並製のソフトカバーだけでなく、上製のハードカバーが候補になります。表紙に金や銀などの箔を使う「箔押し」など、装幀の工夫によって上質さを表現することもあります。
ただし、豪華な本がすべてのブランドに合うとは限りません。親しみやすさや読みやすさを大切にする企業なら、軽く持ち運びやすい本が適している場合もあります。大切なのは、装幀と会社が伝えたい印象が一致していることです。表紙・装幀デザインも、内容と一緒に考える必要があります。
書店で発売しないブランディング出版もある
私も、ある通信会社のブランディング出版を担当したことがあります。その本は一般書店では発売されませんでしたが、ハードカバーで制作され、表紙にも費用をかけておられました。
この経験からも、ブランディング出版は「書店で売る本」に限らないといえます。手に取った方に企業の価値を感じていただくことが目的であれば、販売をせずに届ける方法も選択肢になります。書店流通を行うかどうかは、出版の呼び名とは別に考えることです。
部数や費用は、届ける範囲と仕様で変わる
幅広い方へ届けようとすれば必要部数は増え、ハードカバーや特殊加工を選べば制作費にも影響します。そのため、私の経験では、ブランディングを重視した本は、一般的な企業出版より費用が高めになることがあります。
ただし、名称だけで費用の高低が決まるわけではありません。「誰に何冊届けるのか」と「どのような印象の本にするのか」を具体化してから、仕様と予算を決めることが大切です。費用の検討には、当社の出版費用を、販売方法の検討には、書店流通についてをご参照ください。
まとめ:呼び名よりも、「誰に、何を伝えるか」が大切
企業出版とブランディング出版は、基本的な仕組みが大きく異なるものではありません。企業出版が集客、採用、教育、事業承継など幅広い課題を扱うのに対し、ブランディング出版は、企業や商品への信頼、共感、憧れを育てることを中心に据えた出版です。
既存のお客様だけでなく、将来のお客様、社員、採用候補者にも、会社が大切にする価値を届ける。そのために、本の内容と装幀、部数、販売・配布の方法を一緒に考える必要があります。
まず決めたいのは、「企業出版と呼ぶか、ブランディング出版と呼ぶか」ではなく、誰に何を伝え、どのような変化につなげたいかです。その目的が見えてくれば、御社に合う一冊の形も定まりやすくなります。
ライティング株式会社では、企業の強みや経営者の思いを取材し、読者に伝わる本へまとめるお手伝いをしています。原稿がない段階からでもご相談いただけます。ご相談から出版までの流れもご覧ください。
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