自費出版の印税
自費出版の印税は何%?
2〜60%の違いと、当社が30%にしている理由
ライティング株式会社の高木です。自費出版した本が書店で売れたら、著者にはどのくらいのお金が入るのでしょうか。
これまで調べてきた範囲では、自費出版の印税率には2〜60%ほどの幅があります。2%しか支払わない会社もあれば、売上の半分以上を著者に還元する会社もある。同じ自費出版なのに、なぜこれほど違うのか、不思議に思われるのではないでしょうか。
では、60%の会社を選べば、それでよいのか。出版の仕事をし、会社を経営してきた立場から言えば、そこは少し考えていただきたいところです。著者が受け取る割合だけでなく、出版社にその本を売る理由が残っているかも、大切だからです。
当社の印税率は30%です。著者にできるだけ還元しながら、出版社もその本を売り続けたいと思える条件にしたい。その考え方を、現場で見てきたことと、経営するなかで感じてきたことからお話しします。
自費出版でも印税は発生する。「売上還付金」も実質は同じ
まず、自費出版の印税には、会社によっていろいろな考え方があります。
東京の大手自費出版社のなかには、「自費出版では印税は発生しません」という立場を取る会社があります。ただ、その代わりに「売上還付金」という名称で、売れた本に応じたお金を著者へ支払う場合があります。
著者にとっては、名前の違いよりも、本が売れたときにいくら受け取れるのかが大事でしょう。本が売れ、その売上の一部が著者に戻るという意味では、実質的には印税と同じようなものと捉えています。このページでも、呼び方を「印税」にそろえてお話しします。
では、なぜ「印税は発生しない」という説明をするのか。個人的には、自費出版を主な事業とする会社として、著者への支払いをなるべく抑えたいという考え方があるのだろうと見ています。
自費出版を引き受けることが、その会社の売上をつくる中心の仕事です。そこで経費を増やしたくないと考えること自体は、よい悪いを別にすれば、商売として理解できます。
ただ、その事情と、著者が納得できる条件かどうかは別の話です。「印税ではなく売上還付金です」と説明された場合も、名称で話を終わらせず、実際に何%が戻ってくるのかを見ていただきたいと思います。
契約条件について気になる点があれば、契約・トラブルについての質問も参考にしてください。
印税率2〜5%では、著者への還元が少なすぎると感じる理由
これまで見てきた自費出版社のなかには、印税率を2〜5%ほどに設定している会社があります。この数字には、率直に言って、著者にもう少し還元できないのだろうかと感じます。
というのも、商業出版の仕事では、8%や10%という印税率に接してきたからです。商業出版は、出版社がお金を出して本をつくります。その場合に10%を受け取れるのに、自分で出版費用を負担した本では2%となると、受け取る割合は5分の1です。
自分がお金を出してつくった本なのに、売れたときの取り分まで、そこまで少なくなるのか。著者の側に立てば、そう感じるのが自然ではないでしょうか。
もし自分が著者として自費出版するなら、少なくとも15%や20%ぐらいは欲しいと思います。2%という条件を提示されたら、その会社から本を出そうとは、なかなか思えません。
しかも、仕事を通じて比較してきた印象では、印税率が2〜5%と低い会社ほど、最初に必要な自費出版費用も高いことがあります。出版するときには高額な費用がかかり、売れたあとに戻ってくる割合は小さい。それでは、著者の負担が大きすぎると感じます。
出版費用の見積もりだけでなく、売れたあとにどのくらい戻ってくるのかも、一緒に考えていただきたいところです。
1,000円の本が売れたとき、出版社にはいくら残るのか
一方で、「それなら印税率60%の会社が、一番よいのではないか」と思われるかもしれません。その話をする前に、本が売れたときのお金の流れを、簡単にお伝えしておきます。
書店・取次の取り分と、出版社への入金
たとえば、1,000円の本が一冊、書店で売れたとします。その1,000円が、すべて出版社に入るわけではありません。書店と、取次と呼ばれる出版の卸会社の取り分があるからです。
経営上の感覚で、ものすごく大まかに分けると、書店と取次の取り分が合わせて約4割、出版社に入るのが約6割という見方をしています。
1,000円の本なら、次のようなイメージです。
| 取り分・用途 | 金額の目安 | 本の価格に対する割合 |
|---|---|---|
| 書店・取次の 取り分 |
約400円 | 約40% |
| 出版社に入る金額 | 約600円 | 約60% |
| 出版社の運営経費 (上記600円 のうち) |
約300円 | 約30% |
| 印税などに 回せる余力 (上記600円 のうち) |
約300円 | 約30% |
上の2行は売れた本の代金の配分、下の2行は出版社に入る約600円の内訳です。経営する立場からの大まかな目安であり、実際の割合は本の売れ方や会社の経費によって異なります。
出版社に入ったお金から、運営経費も支払う
さらに、出版社に入る600円を、そのまま利益と考えることもできません。会社を運営するための経費が必要だからです。
事務所の家賃や土地にかかる費用、水道光熱費、編集者などの人件費。こうしたお金を支払いながら、本を扱い続けています。
大まかな目安としては、出版社に入る6割のうち半分、つまり本の価格全体の3割ほどが、そうした経費に回ると考えています。1,000円の本なら約300円です。残る約300円が、著者への印税などに回せる余力になる、という捉え方です。
実際の割合は、本の売れ方や会社の経費によって違います。ただ、出版社に6割入ると聞いても、それを全部自由に使えるわけではない、ということは知っておいていただきたいと思います。
50〜60%の印税を支払える会社があるのはなぜか
ここまでの話からすると、「出版社に入るのが6割なのに、著者に6割を支払ったら、何も残らないのではないか」と思われるでしょう。
そのとおりで、1,000円の本に対して600円の印税を支払えば、先ほどの例では、販売によって出版社に残るお金はなくなります。500円を支払う場合も、経費を引く前で100円しか残りません。
それでも、50〜60%という高い還元率を掲げる自費出版社があります。その背景の一つとして考えているのが、東京の大手出版社と、地方の小さな出版社との経費の違いです。
人件費と事務所の費用が、還元率に影響する
たとえば、人件費を考えてみましょう。東京の大手自費出版社で、社員一人にかかる月々の人件費を60万円と仮定する。一方、地方の出版社では、社員の月給が20万円という場合もあるかもしれません。仮の数字ですが、こうした差は経営に大きく響きます。
事務所の費用も同じです。東京でビルの一室を借りていれば、家賃の負担は相当なものになります。それに対して、地方の出版社では、自分の土地や建物で営業していることもあります。賃料がかからなかったり、借りていても東京より安かったりするわけです。
固定的に出ていくお金が少なければ、それだけ著者に還元しやすくなります。地方の小さな出版社が高い印税率を提示できる理由には、こうした運営の違いもあると見ています。
ただし、経費を低く抑えられることと、売れた一冊から出版社にいくら残るかは、分けて考える必要があります。著者への還元を大きくするほど、出版社自身の取り分は小さくなる。その点は、高い印税率を比べるときにも、見落とさないでいただきたいところです。
印税率が高ければ、出版社は一生懸命に売ってくれるのか
著者にたくさん還元するのはよいことです。ただ、出版社の取り分がほとんどなくなってしまうほど還元することにも、問題があると思っています。
その本が売れても、出版社にはほとんどお金が残らない。それなら、その会社はどこまで力を入れて売ろうとするでしょうか。
本を売るには、人が動かなければなりません。自社に利益をもたらす本と、売れてもほとんど利益にならない本があれば、どちらに力を入れたくなるか。自分でも会社を経営しているので、この点は気になります。
「売上の50%を還元してくれる」「60%も戻ってくる」と聞けば、魅力的に感じるでしょう。しかし、その数字だけで契約すると、出版したあとになって、思ったほど販売に力を入れてもらえないと感じるかもしれません。
高い率で還元してくれても、本が売れなければ、受け取る印税は増えません。高い還元率が、そのまま積極的な販売活動を意味するわけではないのです。
個人的には、50〜60%という条件を見たら、「著者への還元は大きいが、この会社には売るための余力や意欲がどのくらい残るのだろう」と考えます。還元率と一緒に、その会社が出版後に何をしてくれるのかまで、聞いておくべきだと思います。
初版500部から10万部超へ。印税率の低い出版社が販売に力を入れる理由
逆に、印税率が2%と低い大手自費出版社でも、売れる本が出てくると、非常に熱心に販売することがあります。
売れ始めた本には、増刷と販売の力が集まる
これまで見聞きしてきた感覚では、自費出版した本のうち、20〜30冊に一冊、あるいは50冊に一冊ほど、売れていく本があります。
そうした本が出てくると、出版社はぐっと力を入れます。初版500部で出した本を、1,000部、2,000部、3,000部と増刷し、最終的に10万部を超えるベストセラーになったという話もあります。
なぜ、それほど力を入れるのか。売れたときに出版社に残る金額が大きいからだと考えています。
出版社の取り分が、販売への動機になる
先ほどの1,000円の本の例で、出版社に入る金額を600円、著者への印税を2%の20円とすると、印税を支払ったあとの残りは580円です。ここから経費がかかるので、580円がそのまま利益になるわけではありませんが、著者に500円や600円を支払う場合と比べると、出版社に残る余地は大きく違います。
その本が売れれば、自社の収益につながる。だから、もっと売ろうとする。出版の仕事にも、こうした商売としての力が働いています。
| 印税率 | 著者の受取額 | 出版社に残る金額 (経費を引く前) |
|---|---|---|
| 2% | 20円 | 580円 |
| 5% | 50円 | 550円 |
| 30% (当社) |
300円 | 300円 |
| 50% | 500円 | 100円 |
| 60% | 600円 | 0円 |
本の価格を1,000円、出版社に入る金額を600円とし、本の価格に各印税率を掛けた本文の例です。出版社の残額は600円から印税だけを差し引いた金額で、利益そのものではありません。
ただ、著者の側から見れば、複雑な気持ちにもなるでしょう。出版社が一生懸命に売ってくれるのはありがたい。それでも、自分で費用を負担した本なのに、売れたときの取り分は2%しかないからです。
売ることには積極的でも、著者への利益の還元は少ない。この点が、印税率の低い自費出版社について感じている問題です。
当社が印税率30%を選んでいる理由
当社の印税率は30%です。
この数字にしているのは、著者にはできるだけ多く還元したいし、出版社としても、本が売れることを喜べる条件にしたいからです。
著者への還元と、出版社が売り続ける条件を考える
2〜5%では、自分がお金を出して本をつくった著者への還元として、少なすぎると感じます。一方、50〜60%を支払って、売れても出版社にほとんど何も残らなければ、継続して販売に力を入れにくくなります。その間で、双方にとってよい条件を考えてきました。
先ほどお話ししたように、出版社には家賃や光熱費、人件費といった経費があります。経営上の大まかな感覚では、売上の3割ほどをそうした費用に見込むこともあります。そのうえで著者に30%を還元するのは、当社としても、還元できる余力をできるだけ著者に回したいという設定です。
実際の採算は、本の売れ行きや経費のかかり方によって変わります。そのなかで、著者に厚く還元しながら、当社にも販売による利益が残り、さらに売っていこうと思える関係を目指しています。
著者から取りすぎたくない。ただ、著者に渡す割合だけを大きくして、出版社が売ろうと思えなくなるのも違う。著者に対して正直でありたいという気持ちと、会社を経営するうえでの現実の両方を考えると、当社にとっては30%なのです。
自費出版に限って言えば、20〜30%ほどが、著者への還元と出版社の販売意欲を両立しやすい水準だと考えています。そのなかで、当社は30%を選んでいます。
当社の本づくりの考え方や支援内容は、当社独自の12の特長でご紹介しています。事業の専門知識や経験を本にする場合は、企業出版・ビジネス書の出版もご覧ください。
出版費用150万円を、印税で全額回収した著者もいる
当社で自費出版した本のなかにも、売れていく本はあります。感覚としては、10冊に一冊ぐらいかもしれません。もちろん、どの本も同じように売れるわけではありませんが、実際に増刷を重ねる本が出てきます。
第2刷、第3刷、第4刷、第5刷と刷を重ねると、著者も、その本が売れるたびに印税を受け取れます。
増刷を重ね、最初の出版費用を取り戻した例
なかには、最初に自費出版の費用としてかかった150万円を、印税で全額回収したお客様もいらっしゃいます。自費出版はお金を払って終わりというイメージを持つ方もいますが、出版したあとに売れ続け、費用を取り戻した方もいるのです。
著者と出版社が、一緒になって本を届ける
そうした本では、出版社だけが頑張っているわけではありません。著者ご自身が書店へ営業に行くなど、本を売るために動いてくださることもあります。
売れれば著者にもお金が戻り、出版社にとっても販売を続ける意味がある。だから、当社もさらに売ろうとするし、著者も自分の本を届けようと頑張ってくださる。こうした、お互いにとってよい関係をつくりたいと思っています。
150万円を回収した例は、すべての著者に同じ結果をお約束する話ではありません。ただ、著者への還元をしっかり考え、出版後も売っていくことができれば、自費出版にも、そうした可能性があるということです。
本づくりを経験された方のお話は、著者インタビューでもご覧いただけます。
まとめ|自費出版の印税は、還元率と売る意欲の両方で考える
自費出版の印税率を比べるときは、高いか低いかだけで決めないでいただきたいと思います。
2〜5%という会社は、売れる本には力を入れてくれる一方で、売れた利益の多くが出版社側に残ります。著者が最初の費用を負担していることを考えると、もう少し還元してほしいと感じます。
50〜60%という会社は、著者への還元が大きい一方で、出版社自身に販売の利益がどのくらい残るのかが気になります。数字の魅力だけでなく、その条件でどこまで売ることに力を入れてくれるのかも見たいところです。
出版費用、著者に戻る割合、そして出版後の販売。この三つを合わせて見ると、会社ごとの考え方が見えてきます。
当社が30%にしているのは、著者にも十分に還元し、出版社も一緒になって売りたいと思える関係をつくるためです。自分で費用をかけてつくった本が売れたら、その喜びが、きちんと著者にも戻ってくる。そんな自費出版でありたいと考えています。
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