成功事例③ マーク・トウェインも自費出版をした

マーク・トウェインも自ら出版社をつくって代表作を出版した

世界的な作家も「自分で出版する道」を選んだ

「自費出版」と聞くと、まだ有名ではない人が、自分の作品をなんとか本にするための方法だと思う方もいるかもしれません。ところが、世界文学を代表する作家の一人、マーク・トウェインも、自分で出版の主導権を握る道を選んでいます。

マーク・トウェインは、『トム・ソーヤーの冒険』や『ハックルベリー・フィンの冒険』で知られるアメリカの作家です。彼はすでに人気作家として成功していた1884年、自ら新しい出版社「チャールズ・L・ウェブスター社」を設立しました。会社の名前には、経営を任せた甥のチャールズ・L・ウェブスターの名を使っていますが、実質的な所有者はトウェインでした。

そして1885年、現在ではアメリカ文学の傑作とされる『ハックルベリー・フィンの冒険』の米国版を、その出版社から刊行したのです。

マーク・トウェインも、自ら資金とリスクを引き受け、自分の出版社から本を出したのです。

もちろん、19世紀のアメリカと現代の日本では、出版の仕組みが異なります。また、トウェインの場合は、単に印刷代を負担して一冊の本をつくるだけでなく、出版社そのものを立ち上げています。そのため、現在の自費出版とまったく同じ形ではありません。

しかし、著者が費用と事業上のリスクを負い、編集、装丁、印刷、販売方法などについて自ら決定権を持ったという点では、現代の自費出版に通じる挑戦だったといえるでしょう。

なぜ、自分の出版社から本を出したのか

出版社を設立して本づくりと販売の主導権を握るマーク・トウェイン

すでに多くの読者を持っていたトウェインが、なぜわざわざ自分で出版社をつくったのでしょうか。そこには、大きく分けて三つの理由がありました。

理由1 利益を出版社任せにしたくなかった

本がどれだけ売れても、著者に入るのは契約で定められた印税です。トウェインは、それまでの出版契約で得られる利益に満足していませんでした。自分の作品が生み出す利益を、もっと自分のもとに残したい。そのためには、著者として原稿料や印税を受け取るだけでなく、自ら出版元になる必要があると考えたのです。

理由2 本のつくり方と売り方を自分で決めたかった

トウェインが求めたのは、利益だけではありません。挿絵を誰に頼むか、どのような紙や表紙を使うか、どのくらいの価格にするか、どのように宣伝し、読者へ届けるか。作品を世に出すまでの全体を、自分の判断で動かしたいと考えていました。

当時のアメリカでは、販売員が各家庭を訪ねて注文を集める「予約購読方式」が大きな力を持っていました。トウェインの会社は全国に販売員を配置し、見本を見せながら予約を取る販売方法を採用しました。『ハックルベリー・フィンの冒険』については、刊行前に4万部の注文を集めることを目標にするなど、トウェイン自身が販売戦略にも深く関わっていました。

理由3 作品の力と自分の知名度に自信があった

この時点で、トウェインは無名の新人ではありませんでした。すでに人気作家であり、自分の作品を待っている読者がいることも分かっていました。「よい作品をつくり、ふさわしい形で宣伝すれば売れる」という自信があったからこそ、出版に必要な費用とリスクを自ら引き受ける決断ができたのでしょう。

つまり、トウェインが選んだのは、出版社に断られた末の消極的な出版ではありません。作品を自分の考える形で世に出すための、積極的な出版だったのです。

『ハックルベリー・フィン』とグラント回顧録が大成功

ハックルベリー・フィンの冒険とグラント回顧録の出版成功

トウェインの挑戦は、最初から大きな成果を生みました。出版社の最初の刊行物となった『ハックルベリー・フィンの冒険』の米国版は、予約購読方式によって全国へ販売されました。作品は広く読まれ、やがてアメリカ文学を代表する一冊として評価されるようになります。

さらに同社は、第18代アメリカ大統領ユリシーズ・S・グラントの『回顧録』も出版しました。南北戦争の英雄として知られたグラントは、晩年、家族に財産を残すため、病気と闘いながら原稿を書いていました。

トウェインは、グラントに不利な条件を提示した別の出版社に対し、著者側へより多くの利益が残る契約を提案したとされています。1885年から1886年にかけて刊行された『回顧録』は歴史的な大ヒットとなり、グラントの遺族にも大きな収入をもたらしました。

自分の代表作を、自分の考える方法で読者へ届ける。
さらに、ほかの著者の大切な本も世に送り出す。
トウェインは作家であると同時に、出版人としても大きな成功を収めました。

自費出版は、「本が売れない人のためだけにあるもの」ではありません。すでに読者を持つ著名な作家であっても、利益の配分や本づくり、販売方法を自分で決めたいと考えれば、自ら費用とリスクを負う出版を選ぶことがあるのです。

成功だけでは終わらなかった――出版社の倒産と借金返済

出版社の倒産後に世界講演旅行へ出発するマーク・トウェイン

ただし、トウェインの出版事業は、成功だけで終わったわけではありません。大ヒットのあとに刊行した本のすべてが、同じように売れたわけではなかったからです。

出版には、編集、印刷、製本、広告、保管、販売など、さまざまな費用がかかります。売上が期待を下回れば、投じた資金を回収できません。同社では、制作費のかかる出版企画や資金回収に時間のかかる事業が経営を圧迫し、社員による横領や取引先からの代金回収の問題も重なりました。こうして、最初の大成功から約10年後の1894年、チャールズ・L・ウェブスター社は倒産しました。

同じ時期、トウェイン個人も「ペイジ植字機」という新しい自動植字機へ巨額の資金を投じていました。完成すれば印刷業界を変える発明になると信じていましたが、機械は構造が複雑で、実用化と事業化は思うように進みませんでした。この投資の失敗も、トウェインの財政を深刻に悪化させました。

出版事業と新技術への投資によって、多額の負債を背負ったトウェイン。しかし彼は、法的な責任を免れることができた負債についても、できる限り返済する道を選びます。

1895年、59歳のトウェインは、講演料を得るために世界講演旅行へ出発しました。北米からオーストラリア、ニュージーランド、インド、南アフリカなどを巡り、約1年にわたって講演を続けます。さらに、その旅行をもとにした本も執筆しました。そして1898年までに、債権者への支払いを完了したとされています。

自分で出版することには、大きな自由があります。
その一方で、費用、部数、在庫、販売方法を慎重に考える必要があります。

トウェインの経験は、自費出版の可能性だけでなく、出版を事業として行う難しさも教えてくれます。だからこそ現代の自費出版では、最初に目的と読者を明確にし、無理のない予算と部数を設定することが大切なのです。

まとめ――自費出版は、作品を世に出すための一つの方法

マーク・トウェインは、出版社から相手にされなかったために、自分で本を出したのではありません。すでに世界的な人気を得ていた作家が、利益の配分、本のつくり方、宣伝、販売方法について自ら主導権を持つために、自分の出版社をつくり、代表作を刊行しました。

その挑戦から分かるのは、自費出版が決して特別な人だけのものでも、商業出版ができなかった人だけのものでもないということです。

自分の経験や考えを、家族へ残したい。仕事で培った知識を、次の世代へ伝えたい。小説やエッセイを、読者に届く形にしたい。会社の理念や創業の物語を、社員や取引先に知ってもらいたい。そのような明確な目的があるなら、自ら出版を選ぶことには大きな意味があります。

もちろん、現代の自費出版で、著者自身が出版社を設立する必要はありません。編集者やライターの支援を受けながら原稿を整え、デザイン、印刷、ISBNの取得、Amazonでの販売、一般書店への流通までを一つずつ選ぶことができます。紙の本だけでなく、電子書籍やPOD(プリント・オン・デマンド)という方法もあります。

また、トウェインの失敗から学べるように、最初から大量の本を印刷すればよいわけではありません。誰に読んでもらうのか、何のために出版するのか、どのくらいの費用と部数が適切なのかを考え、自分に合った出版方法を選ぶことが重要です。具体的な金額を知りたい方は、当社の自費出版の費用ページもご覧ください。

「有名人でなければ、本を出しても意味がない」
「自費出版は、売れない本を出す方法ではないか」
「自分の経験を本にするのは、大げさではないか」

そのように考えている方にこそ、マーク・トウェインの出版物語を知っていただきたいと思います。世界的な作家でさえ、自分の作品を自分の望む形で届けるために、自ら出版する道を選びました。

本を出す理由は、知名度の有無ではなく、伝えたいものがあるかどうかです。

原稿がまだ完成していない方や、何から始めればよいか分からない方も、心配はいりません。当社では、企画の整理、取材、執筆、編集、デザイン、印刷、販売まで、ご希望に応じてお手伝いしています。自伝・自分史をご検討の方は、自伝出版の案内ページもあわせてお読みください。

「自分の本を出してみたい」と少しでも思われたら、下記のお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

【主な参考資料】
・カリフォルニア大学「Mark Twain Project Online」『ハックルベリー・フィンの冒険』刊行経緯、マーク・トウェイン略年譜、自伝資料
・The Mark Twain House & Museum「Biography」
・Library of Congress「Ulysses S. Grant Papers」

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