今日の一言 「蒼煌」文春文庫 黒川博行著 を読んで

2017/06/13

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最近はスカパーで放映された「疫病神」シリーズが好評になり直木賞をとったり、「後妻業」を書いた後に実際に同様の事件が起こったりして、注目を浴びつつあるのが、黒川博行氏である。書店でも大きなスペースが確保されており、これまで氏の書籍を書店で見つけるのが難しかったのが、昔のことのように懐かしい。

氏の小説が面白いのは、1小説に1テーマがかならず設定されており、そのテーマが普遍的かつニュース性のある題材であり絶妙なところ。そのテーマに基づいて、これでもか、というぐらい緻密な取材があり、関係者でも知らないぐらい深く「掘られて」おり、その分野について鋭い知見が得られるのがうれしい。

「蒼煌」は日本画をはじめ芸術界の暗部を描いた作品。大学時代に彫刻を専攻していた氏の経験が本書全体にちりばめられている。もう、5年ほど前に読んだが、面白い本というのは、すぐに誰かに渡してしまうもの。読みたいと思ったときに、すでに手元になく、でも、やっぱりもう一回読みたいと欲望がふつふつと湧きだし、二度も買ってしまうことに。

そして、二度読んだ感想ですが...
二度読んだと思えないほど、小気味のいい展開に再度、興奮。
(^_^;)

詳しい内容や書評はアマゾンなどをみてもらうとして
この小説の登場人物達は、大きく分けて三種類いる。
高齢者、中年、青年である。

私の場合は、中年なので、中年の登場人物の気持ちが痛いほど、よくわかる。
高齢者の方は、高齢者の心情に深く、同情することができる。
青年であれば、青年の登場人物達の気持ちに、すんなりとなれてしまう不思議な小説だ。

あんまり面白かったので、事務所スタッフに「読みなさい」といって、渡してしまった。「読み終わったら返してね」といって貸したけれども、私の場合、だいたい貸したこと自体を忘れてしまう傾向にある。(^_^;)

だから、きっと三冊目を買うことになるだろう。
何冊買ってもいい、何回読んでも面白い小説、です。
京都が舞台で、ローカルな地名もたくさん出てくるので、京都好きの方にも、お勧めだ。




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